【なぜマリウスは戦ったのか】レ・ミゼラブルの歴史背景解説

歴史
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こんにちは。やっす(@yassu_blog)です。

映画やミュージカルにもなり、初版発行から150年以上たった今でもいまだに多くの人から愛されているビクトール・ユゴーの歴史的な名作「レ・ミゼラブル」はご存知でしょうか。
レ・ミゼラブルの作品は実際のフランスの1700年代後半から1832年にかけての時代背景のもとに作品が描かかれています。
この記事ではそのレ・ミゼラブルの作品の時代背景を解説します。

レ・ミゼラブルはフランスの歴史を知らなくても十分ストーリーを楽しめる名作ですが、歴史背景を知っていると更に楽しむことができます。
なぜジャン・バルジャンはパンを盗む必要があったのか。マリウスら青年たちはなぜ王政と戦っていたのか?など知ると更に深く作品が楽しめますよ!

また、この記事については、YouTube動画でも解説しています。

マリウスは何故戦ったのか?レ・ミゼラブルの歴史背景解説

レ・ミゼラブルの舞台はどこ?

レ・ミゼラブルはフランスを舞台とした作品です。
コゼットが成長してからのシーンではパリが舞台となっており、なかでもクライマックスシーンの6月暴動でマリウスたちがバリケードを築いていたのはパリのポンピドゥーセンターに近い、サン=ドニ通りとランビュトー通りのあたりとされています。

フランスの歴史とレ・ミゼラブル

フランスの歴史とレ・ミゼラブルの作品中の出来事を年表で整理します。

年代
1789年
1796年
1799年
1815年
1823年
1830年
1832年
1848年

実際の歴史
フランス革命

ナポレオン政権掌握
ナポレオン失脚・王政復活

7月革命
6月暴動
2月革命

作品内での出来事

ジャン・バルジャン投獄

ジャン・バルジャン仮釈放
ファンテーヌ工場をクビに

マリウスらが戦う

この時代は王政によって虐げられてきた市民が自分たちの権利と自由を主張し、権力に立ち向かって革命を起こす時代です。
ジャン・バルジャンやマリウスら市民が何に不満を持ち、何を変えたいと願っていたのかが歴史的背景からわかるとなお作品が楽しめると思います。

1789年 フランス革命

フランス革命を端的に説明すると、それまでの絶対王政により税金の取り立てなどに苦しめられてきた農民や商人たちの不満が高まり、王政を打倒した市民革命です。
このフランス革命により王族や貴族から市民が実権を奪います。
1789年のバスティーユ牢獄襲撃に始まり、1793年にルイ16世とマリー・アントワネットが処刑されます。

それにより市民に平和が訪れたと思われるかもしれませんが、実情は違いました。
レ・ミゼラブルの作品中でも貧困にあえぎ、妹の子供に食べさせるためのパンをジャン・バルジャンが盗んで投獄されたのは、国王の処刑よりも3年後の1796年です。
国王が処刑されてからナポレオンが政権を握るまでの期間は、政権をめぐる派閥争いなどで政治は混乱、また革命の影響が自国に及ぶことを危惧したオーストリア、プロイセンなどの隣国に攻め込まれるなどし、市民はむしろ革命の前よりも貧しい生活を送らざるを得なかったと言われています。
そのような時代背景の中ジャン・バルジャンは盗みを犯し、19年もの間投獄されることとなります。

そしてこのフランス革命後の混乱を収めたのが軍人出身のナポレオンでした。英雄として市民の人気を得たナポレオンがクーデターにより1799年に実権を握ります。
また、この後ナポレオンがフランスの皇帝となる際、戴冠式を行ったのがパリのノートルダム大聖堂です。

参考記事 ディズニー映画『ノートルダムの鐘』の時代背景は?ノートルダム大聖堂の歴史

1815年 ナポレオンの失脚

皇帝としてフランスを率いてきたナポレオンですが、1815年のワーテルローの戦いにおいて、イギリスやプロイセンなどの連合軍に敗れ、失脚します。
そして、フランスではフランス革命もむなしく、王政が復活しルイ18世が復権します。
このように周囲の国との戦争や国内での政治の混乱した年にジャン・バルジャンはトゥーロンの牢獄から仮釈放されます。
しかし物語にもあるように、仮釈放の人をを迎え入れるほどの余裕は当時のフランスにはなかったということが推測されます。

その後、作品では1823年に時代が移り、ジャン・バルジャンはモントレイユで工場を経営しつつ、市長として市民に慕われています。
この時代はイギリスの産業革命の影響を受けフランスでも工場などが生まれてきた時代でした。
しかし一般の市民の生活は豊かになってはおらず、ファンテーヌのように安い賃金で長時間働かされ、雇い主の意向に反するとすぐクビとなってしまうような時代でした。
まだ資本主義が始まったばかりで労働者の権利は今のように整っていなかったといえます。
そして仕事を失って生きていけずファンテーヌのように髪や歯、そして体までも売らざるを得ない市民は実際に多くいたと考えられています。

1830年 7月革命

このようにして王政が復活したフランスでは以前のような貴族・聖職者優遇などがされており、民衆の反感を買うことになります。
そして自由を求め民衆は、1830年7月に再度市民革命を起こします。そうして当時の王であったシャルル10世は退位します。
その王の座を自由主義に理解のある人物としてルイ・フィリップが王座につきます。
ルイ・フィリップは貴族性を廃止などを進めますが、それでも労働者階級には当時選挙権が認められないなどの問題もありました

1832年 6月暴動

このようにして、民衆の不満は収まりきっていない状態がつづきました。
また、不作が続いたことで物価も上昇するなどの経済的な問題も発生していました。
そんな中、作品中にも登場する、民衆の味方として人気のあったラマルク将軍が亡くなります。
市民が行ったラマルク将軍の民衆葬儀の中、ついに民衆の怒りは抑えきれなくなり、暴動がおこります。
この時市民は市街の路地にバリケードを築いて警官や王政に対峙しました。
この6月革命が作品中でマリウスやアンジョルラスが繰り広げた争いです。
作品の通り、暴動は警官隊によって鎮圧されてしまいますが、7月革命などの経てパリ市民の間には民衆が武器を取って戦うことで国を変えることができると感じられるようになってきていることがうかがえます。

1848年 2月革命

この2月革命はレ・ミゼラブルの作品中には描かれていないものの、7月革命・6月暴動を経験した市民が更に力をつけていき、ついにルイ・フィリップを退任させ、フランスを共和制の国へと導きました
マリウスたちは6月革命では敗れたものの、のちの2月革命につながる戦いだったといえるでしょう。

まとめ

レ・ミゼラブルはフランスの激動の時代の人々を描いた作品です。
レ・ミゼラブルはこのような市民が中心となって歴史が作られた時代において、市民に焦点を当てた作品だからこそ今なお語り継がれる名作なのでしょう。
このような歴史的背景を知らなくとも楽しめる作品ですが、歴史を知ると更に、登場人物の気持ちが理解できるのではないでしょうか。

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